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研究紹介

ここでは、比較的新しい論文から3編をとりあげて概要をわかりやすく説明しています。

カスプ域の極向き移動オーロラ構造のダブルバースト

(Journal of Geophysical Research 2012年12月号)

キーワード:オーロラ、カスプ域、フラックス・トランスファー・イベント、電離圏

極域に見られるオーロラは、遠方から降り注いでくる荷電粒子が原因となっています。そのため、オーロラの出現や動きから、遠方で起こっている粒子の注入を伴う現象の性質を知ることができます。本研究は、ノルウェーのスバールバル諸島のロングイヤービィーエンの町の山の上に設置した高感度の装置を用いてオーロラを観測し、地球の上空7万キロメートル付近(地球の半径の10倍程度上空)で起こっているエネルギー変換プロセス(リコネクション)の間欠現象の性質を明らかにしています。この間欠現象が起こると、孤立した地球の磁力線の管の移動(フラックス・トランスファー・イベント)が起こり、それに沿って荷電粒子が注入されて電離圏のカスプ域と呼ばれる特徴的な緯度・経度に粒子が降り注ぎます。従って、そのカスプ域に見られる極向き移動オーロラ構造がフラックス・トランスファー・イベントの可視化されたものであり、両者に一対一の対応があるとこれまで考えられてきました。本研究では、高い時間分解能のデータを解析して、約2分の間隔で連発する二つのオーロラのバーストによって構成されている極向き移動オーロラ現象を見出しました(図の右側AとB。この図の四角の枠は図の左側の点線部分を拡大したもの)。このことは、一つの極向き移動オーロラ構造に二つのフラックス・トランスファー・イベントが対応していることを意味します。非常に安定した太陽風状態の時にこのような事例が見出されていることも考え合わせると、フラックス・トランスファー・イベントを生み出す間欠的なリコネクションには2分程度の時間スケールで変調を起こすような固有の性質があるのではないかと考えられます。

出典

Taguchi, S., K. Hosokawa, Y. Ogawa, T. Aoki, and M. Taguchi (2012) Double bursts inside a poleward-moving auroral form in the cusp, Journal of Geophysical Research, 117, A12301, doi:10.1029/2012JA018150.

対流圏の擾乱に起因する大気光同心円構造の全体像の初観測

(Geophysical Research Letters 2014年10月16日号)

キーワード:大気光、同心円構造、国際宇宙ステーション、近赤外域、中間圏・下部熱圏

大気光は地球超高層大気中の分子・原子が太陽光からのエネルギーを受けて光化学反応によって微弱な光を放出する現象です。高度400km付近を飛翔する国際宇宙ステーションに搭載されている可視近赤外分光撮像装置(VISI)は、中間圏・下部熱圏からのこのような大気光を観測しています。2013年6月1日04:33UT(UT:世界時間)から04:49UTにVISIは、北アメリカ上空の高度95km付近で発光する酸素分子大気光(波長762nm)の同心円構造を捉えました(図の右側部分。上側のパネルはVISIの前側の視野、下側のパネルは後側の視野)。このような同心円構造はこれまでの地上観測でその一端が捉えられてきましたが、今回初めて円の中心部から端までの全体構造を捉えることに成功しました。これにより、中心から1000km以上にわたって同心円構造がほぼ減衰せずに伝搬していること、水平波長80kmの成分が支配的であることが明らかになりました。また、VISIの前後の視野の観測時間差および波面の位置の違いから外向きの伝搬速度も推定できます。この同心円構造は、観測の前日に発生した竜巻に由来する雲から大気重力波が継続的に発生して上方に伝搬し、発光層付近で水平方向に広がった結果生じたものと考えられます。VISIは、この事例以外にも大気光中の同心円構造を捉えており、これらを通して、中間圏・下部熱圏と成層圏・対流圏の結合過程を明らかにできるものと考えています。

出典

Akiya, Y., A. Saito, T. Sakanoi, Y. Hozumi, A. Yamazaki, Y. Otsuka, M. Nishioka and T. Tsugawa (2014) First space-borne observation of the entire concentric airglow structure caused by tropospheric disturbance, Geophysical Research Letters, 41, 6943-6948, doi:10.1002/2014GL061403.

CHAMP衛星によって観測された下層大気起源沿磁力線電流の微細構造のグローバルな高頻度出現

(Earth, Planets and Space 2014年5月号)

キーワード:CHAMP衛星、沿磁力線電流、E層ダイナモ、下層大気起源

地球の高度約400kmを周回するCHAMP衛星は、その安定した姿勢のために非常に精度の高い磁場データを取得することができます。本研究では、その磁場データを解析することによって、特徴的な微小磁場変動が中低緯度の高度400km付近の電離圏のほぼ全域に生じていること(図の波状構造。縦軸,横軸はそれぞれ磁気緯度,磁気経度)を見出しました。高緯度の同じような高度には大きなスケールの磁場変動が生じており、それについては太陽風や磁気圏に起源をもつ沿磁力線電流(地球の磁力線に沿って流れる電流)が生み出していることが過去の研究からわかっていました。今回の発見である中低緯度の微小な磁場変動の起源が何なのかを明らかにするために、変動の振幅がどのような場所で大きくなるのかについて調べました。その結果、北半球では、夏にアメリカ大陸・ヒマラヤ山脈の遥か上空において、また冬には東太平洋上空において振幅が大きくなっていることがわかりました。こうした地表の形状を反映していることは磁場変動が下層大気起源であることを強く示唆します。下層大気の擾乱によって励起した大気重力波が電離圏のE層(~100km高度)にまで伝播し、そこでのダイナモ作用を通して電流を生みだし、その電流が地球の磁力線に沿って流れ出たり入ったりすることで上の高度に微細な沿磁力線電流構造が作られるという考えを提案しています。

出典

Nakanishi, K., T. Iyemori, K. Taira, and H. Lühr (2014) Global and frequent appearance of small spatial scale field-aligned currents possibly driven by the lower atmospheric phenomena as observed by the CHAMP satellite in middle and low latitudes, Earth, Planets and Space, 66:40, doi:10.1186/1880-5981-66-40.

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