ハンガーノック

昨日のスポーツうるぐすを見ていると、東京国際女子マラソンの結果が放送されていた。どうやら、朝食をあまり食べられなかったのが原因で、高橋尚子選手はレースの後半に失速してしまったらしい。後の監督インタビューを聞くと、高橋選手は朝食をあまり食べられなかったらしい。この様子を見て、私は、1回生の時の琵琶湖サイクリングを思い出した。

5年前、その日のアマチュア無線の国家試験で散々な結果となってしまい、傷心の私は自転車で琵琶湖を1周しようと思い立った。所持金わずか1000円であったが、なんとかなるだろう、と思ってそのまま出発した。琵琶湖を反時計回りに走っていて、途中、琵琶湖大橋近くのコンビニでジュースと食事を買ったのだが、その時に所持金の大半を使ってしまったため、食事はこの1回きり。何とか京都までもつだろう、と思っていた。湖北を過ぎ、湖西にはいってから軽い空腹を感じたが、そのままあまり休むこと無く走りつづけた。このままだったら昼前には京都に戻れる、と思っていたのだが、見通しが甘かった。

堅田の北、和爾から坂を越えて途中トンネルへ向かっているときのこと、時には自転車を押して歩き、時には自転車を力いっぱい漕いで坂をのぼっていると、突然、体の力が抜けて、自転車を漕いで坂道をのぼることができなくなった。喉がとても乾き、お腹もすいていたのだが、店も無ければお金も無いのでどうしようもない。なんでもいいから水が欲しかった私は、工事現場の水道水や小川の水を飲んだ。だが、それでも力が出ない。何とか途中トンネルの近くまで行き、坂の土手で休む。気がついたらタイヤがパンクしている。おまけにお腹がすいたし、眠い。だが、何とかして京都には帰らなければいけない。少し仮眠をしてからまた出発したが、足に力が入らない。というより、もはや

上り坂が恐かった。

何とかして坂を上りきり、後は坂を下って大原を通り市街地に戻るだけであったのだが、大原での上り坂で自転車が止まってしまう。手で押して坂を越え、ほうほうの体で上高野(市街地の端)についた。ここで改めて、ほんのちょっとした上り坂さえも足に力が入らなくて自転車では上れなくなっている自分、上り坂が恐い自分に気づいた。ちょうどお昼になっていて、両親からの仕送りが入っていたので、これで助かる、と思いながらお金を引き出した。近くのラーメン屋に入るなり、水をガブ飲み。コップで5杯位飲んだであろうか。少ししてラーメンが出て来た。だが、水を飲みすぎたためだろうか、非常にお腹がすいているにもかかわらず、全部食べることができず、結局半分近く残してしまった。全部食べられない自分が悔しかったが、店を出て、周りの景色が少し変わって見えたのが救いであった。そのままなんとか自転車を漕いで家に到着した。

これが、ハンガーノック、という症状らしいことを、後で調べて知った。体の血糖値が低下して起こるのだそうだ(もっと詳しい解説等は、Webを参照してください)。このようなハンガーノックははっきり言って恐い。このような恐怖体験を経て、それ以降、サイクリングに行くときは十分なお金を持ち、十分な休息、そして十分な栄養、水分補給を心がけている。


Nov. 17/2003 by T.SHIMODA

戻る