女満別訪問記

INTERMAGNETでは、気象衛星「ひまわり」を経由してリアルタイムの地磁気データを集めていますが、このところ女満別からの送信がうまくいってませんでした。そこで、10月1日から2日にかけて、女満別の送信機・ケーブル・アンテナのテストとアンテナ・ケーブルの交換作業を実施しました。
私は、地磁気センターの亀井先生と共に気象庁地磁気観測所女満別出張所を訪ね、作業の手伝いをしました。当日は屋外のアンテナ部分と送信機のある屋内とを行ったり来たりしとバタバタしていましたが、そんな中、観測所の施設を見学させて頂きましたので、その様子を紹介します。

まず始めに、地磁気変化を測定しているところを訪ねました。この観測は地面に掘られた地下室の中で行われています。日本国内の観測所では、このような深い地下室の中で観測するそうです。そして、中の気温は常に8度ぐらいで一定になっているそうです。階段で7mほど降りていくと、Fluxgate磁力計のセンサーが鎮座していました。このように、温度変化も少ない地中でさえも、ノイズは入ってくるそうです。女満別で一番問題になっているのは、この観測坑から100mも離れていないところにある自動車教習所です。ここは大型の教習も行っているため、短い周期で見ると影響が出ているそうです。そのために、現在もう少し山寄りのところに別の地下室を掘って試験的に観測しているそうです。

次に、絶対観測の小屋も見せて頂きました。この小屋はかなり大きく、ちょっとした一軒家ぐらいはありました。こちらの小屋は温度を一定にするためにヒーターが入っていて、室内はやや暑かったです。ここには絶対観測を行う装置がありました。また、以前使っていたという大きな電源装置がおいてありました。冬にはかなり寒くなるので、天測は今の時期にやっておくそうです。訪問したときでさえも、午後3時を過ぎると急に冷え込んできてました。ずっと本州でしか生活したことのない私にとっては、冬は全く想像もできないような世界になるのでしょう。

この小屋の近くに、新たに高精度Fluxgate磁力計のセンサーを置くための立派な建物がありました。この建物の屋根は銅板で張ってあるのですが、これがくせ者で、観測をしてみると日射の有無によって観測値に影響が出るようになってしまったそうです。このような精密な観測には様々な苦労があるのだな、と感じました。

また、本館の中にはデータを処理するコンピュータやパソコンなどが置かれていました。これらの機械によって観測データを取っているそうです。ただ、これらのコンピュータは外部とはオンラインでつながっていないので、ディスクを通じてやりとりしていると聞きましたが、オンラインでつながったらもっと便利になるだろうと感じました。

観測所全体を見た感想は、現在私自身が峰山(京都府)で行っている観測とは、雲泥の差があるということです。実際に地磁気の観測が行われているのは峰山でしか見たことがなかったので、見るものはどれも新鮮なものでした。このような場所に比べたら峰山なんておもちゃみたいにも思えてしまいます。それと同時に、自然現象の観測の難しさというものも実感しました。国内では一番条件の良い女満別でさえも、様々なノイズが入ってしまっているのですから。
このような様々な苦労の末に取られたを我々は使うことができるのですから、常に感謝の気持を忘れてはいけないとも思いました。

(京都大学 理学部 地球惑星科学系 4回生・藤田信幸)

注:この文章は、地磁気センターニュース No.46 (1997年11月20日発行)に掲載されたものです。
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